ちょっと肌寒いなと思ってヴェクショーで迎えた朝、気温は-4℃。北欧の長い冬の始まりを感じさせられるお天気です。スウェーデンと日本の時差は8時間。こちらの深夜が日本ではお昼頃になるので、疲れているはずなのに何度も目が覚めてしまうのは仕方ないですね。
7時半に朝食を取り、9時半に今年も研修をコーディネートしてくださっている、リンネ大学の鈴木満先生と合流し、研修スケジュールの打ち合わせを行いました。今年は色々と新しい訪問先をお願いしたこともあり、ギリギリまで調整をしてくださっていました。お楽しみに!
さて、今年の研修のスタートは、毎年欠かさず訪問している、知的障害者の方々が働いている工房パッペリーアン(Papperian)。すっかり顔なじみになったスタッフのモニカさんが、ここでの活動の様子を説明してくれました。まずは、地下の作業場で、コミューンの印刷工場から出た不要な紙を水に浸して撹拌し、紙すき・脱水・乾燥をして、色とりどりの紙を製作します。それを1Fの作業場で、ポストカードや封筒など、様々な商品に加工していきます。いまはちょうどクリスマスカード作りの真っ最中。たくさんのサンタクロースが描かれたカードや包装紙が、ところ狭しと並んでいました。今日はちょっと利用者のみなさんが少ないと思って聞いてみると、月曜日の午前中は成人教育の学校に通っている人が多いとのこと。前のセメスターからの試みで、お店での商品の販売などの対応も学んでいるそうです。毎年訪れていても常に新しいことにチャレンジしている姿は、とても刺激になります。パッペリーアンもオープンしてから今年で20年。12月にはお祝いのパーティが催されるとのことです。
さて、今日のランチはこちらもお馴染みの高齢者施設、トフタゴーデン(Toftagården)のレストランで。スウェーデンの施設には必ずレストランやカフェが併設されていて、地域の人たちが気軽に立ち寄ることができるようになっています。今日のメニューはハンバーグか魚のシチュー。「ジャガイモはいくつ?」と聞かれるのが定番です(笑)
お腹もいっぱいになってすっかり温まったところで、施設長のアン・マリーさんからお話を伺いました。トフタゴーデンは、4つのユニット、計35室で構成されていて、3つのユニットは高齢者の、もうひとつのユニットは、身体障害のある方のためのユニットになっています。中を見学させてもらうと、インテリアのセンスの高さにビックリ。オープンから11年経つとは思えないほど、とてもキレイに整えられています。今年87歳になられる入居者のエヴァさんにお話を伺うと、「ここにいると毎年若くなっていくわ」とのこと。使い慣れた家具や思い出の品に囲まれて、とても穏やかに暮らしておられたのが印象的でした。トフタゴーデンは平屋建てで従業員のケアにも力を入れていて、人気のある職場とのこと。オープン時からのスタッフも何人か頑張っているようです。
15時からは、ペール・ラーゲルクヴィスト・スクール(Pär Lagerkvist Skola)に見学に行く予定だったのですが、見学の担当の方が体調不良でキャンセルに。半ば諦めていたところ、鈴木先生がコンタクトをとってくださり、ヴェクショーの西部地区の教育長、アンダシュ・シェーデル(Anders Tjäder)さんが16時から案内をしてくださることになりました。
この空き時間を利用して、ヴェクショーの市内観光に。鈴木先生が「百見は一聞にしかず」と名付けた水道塔や、エヴェダール湖、クロノヴェリィ城跡などを巡りました。ヴェクショー(Växjö)の"Väx"は道、"jö"は湖を意味するように、交通の要所で湖が多いのがヴェクショーの特徴。ひんやりとした空気の中で、湖の美しさが際立っていました。
そして16時にペール・ラーゲルクヴィスト・スクールを訪問。ヴェクショー出身のノーベル賞作家ペール・ラーゲルクヴィスト(Pär Lagerkvist)の名前が付けられたこの学校は、小学校・中学校・こども園が併設され、今年の8月にオープンしました。今回はこども園を中心に見学させてもらいましたが、どの部屋も白樺の木材をふんだんに使った北欧デザインで、勉強したり遊んだりしたりすることが楽しみで仕方ない!!と思えるような、素晴らしい環境でした。
こども園の部門では、レッジォ・エミリア・アプローチをはじめとした様々な教育法を組み合わせた独自のアプローチをするために、建物の設計や組織の編成など5年前から準備を進めてきたとのこと。3-5歳の子ども達には「創造」「科学」「言語」のそれぞれのテーマの部屋が用意され、自由に行き来をして学びを深めることができることになっています。そしてここにももちろん、屋外でお昼寝をするスペースが完備されています。スウェーデンではどこのこども園にもあるのですが、いくら防寒するとは言えこの寒さの中で寝るのはちょっと勇気がいりそうです。とても健康によいそうですが・・・。
それにしても驚かされたのは、アンダシュさんが学校の隅々まで詳しく分かっていて、案内をしてくださったこと。このポジションにいる方にこのような理解があるということが、スウェーデンで素早い意志決定やアクションを行うことができる秘密のひとつなんだということを、改めて感じさせられました。
ホテルに戻って今日のディナーのメニューは、鶏肉のハーブ風味。お腹がいっぱいになった後は、ハードな研修の疲れもあって、早めに解散となりました。さあ、明日はどんな1日になるのでしょうか?
Tsukasa