スウェーデン研修―その4

スウェーデン研修も4日目。体もだいぶこちらの生活に慣れてきました。

 

今日は、朝9時すぎに鈴木先生をお迎えに行き、認知症専門看護師(Demenssjuksköterska)の、エバヨハンナ(EvaJohanna Andersson)さんのお話をうかがいに行きました。認知症専門看護師は、ヴェクショー市にひとり配置され、認知症の人の家族に、情報を提供したり、勉強会を開催するなどして、サポートをしています。また、高齢者施設で働くスタッフへの認知症ケアに関する教育や、スーパービジョンも行っています。私は9年前に初めて認知症専門看護師の方にお会いし、「こんな仕事が日本でも必要だ」と思い論文を書いたのですが、今回、その思いを改めて強くしました。

 

続いて11:00から、エベリッド(Evelid)という高齢者施設の見学。ここは3階建てとなっているのですが、1階でヴェクショー市がショートステイなどのサービスを提供し、2階・3階でカレマケア(Carema Care)という会社が、高齢者のケア付き住宅を運営しています。近年スウェーデンでは、福祉サービスをこのように民間に運営委託するケースも増えてきています。

まだ誰も入居していないユニットを見せてもらったのですが、フロアはシンプルで統一感のある雰囲気にまとめられていました。また、民間ならではの職員への待遇や内部規定の話も聞くことができました。施設長のお話では、市営の施設よりも給与は少し低いが、応募はとても多いとのことでした。

 

昼食はこの施設のレストランでいただきました。スウェーデンの高齢者施設の多くはレストランやカフェを併設していて、地域の人でも自由に来て食べることができます。今日のメニューはミートボールかソーセージとたくさんのジャガイモに、たっぷりのリンゴンベリーのジャムをつけて食べるという、典型的なスウェーデン料理でした。普段では食べきれないほどのボリュームでしたが、体が慣れてしまったのか、みんなきれいに食べていました。

 

13:00からはフェッペット(Skeppet)という保育園に。環境教育に力をいれている保育園で、65人-70人ぐらいの園児を受け入れています。スウェーデンでは、保育園に入園を希望すると、市は4カ月以内に必ず対応しなければならないことになっているので、待機児童の問題はありません。夏の間は5週間、保育園も夏休みになるというのが、スウェーデンらしいなと思いました。今週は秋休み期間ということで、子どもの数は多くなかったのですが、日本でも、スウェーデンでも、子どもたちの笑顔は同じ。日本からの見慣れないお客さんに、とても興味をしめしてくれました。

 

その後、リンネ大学に行って、クリスティーナ(Christina Siwertsson)先生から、スウェーデンでの家族介護者の状況や、高齢者福祉の動向についてお話をうかがいました。経済的な状況や、民営化の増加によって、スウェーデンの高齢者福祉が以前のように自由にはならない現状は、少し残念に思いますが、それでも新しいアイディアやシステムによって、チャレンジを続けている姿勢は、さすがスウェーデン、という印象を受けました。

 

その後、大学の中を少し見学したのですが、最も新しい建物は、IKEAとのコラボレーションでできたとのことで、まるでIKEAのショールームのような感じになっていました。こんなところで勉強ができたら、毎日たのしいだろうな・・・と思わずにはいられません!

 

夜は、17:00から、認知症の人の家族の勉強会を見学させてもらうことができました。県の認知症専門看護師が2人と、朝お会いした市の認知症専門看護師のエバヨハンナさんの3人が講師となって、認知症とは何か、認知症になったらどうなるか、認知症の人にはどう接すればよいか、というお話をされていました。家族支援員のお二人も来られていて、街ぐるみで「認知症ケアに取り組もう」という姿勢が伝わってきました。家族が認知症になっても、こういった取り組みが日常的に行われていれば、孤立してしまうことはないんだなと、とても勉強になりました。

 

Tsukasa

 

コメント: 2 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    おかん (土曜日, 12 11月 2011 08:27)

    はじめまして、ストックホルム在住の者です。
    この数日、スウェーデン最大のケア・サービス会社であるCarema Careの悪質な実態が報じられているので、日本語で書かれた記事はないかと探している過程でこちらにたどり着きました。(ちなみに日本語で書かれた記事は見つかりませんでした。)

    衛生状態が悪く、ひどい場合は入居者が手足の切断をせざるをえないケースも多く、施設内で亡くなられた方も極端に多いそうです。Carema Careにおける被雇用者の実に5人に1人が社会庁に対し、自身の会社への査察を求めています。

    英語の関連記事はこちらです。
    'Secret' bonus scheme at nursing homes revealed
    http://www.thelocal.se/37192/20111106

    Care home staff weigh diapers to save money
    http://www.thelocal.se/37292/20111111

    こうした重大な問題を抱えているのが、Caremaによるすべての高齢者施設なのかは分かりませんが、報道を見る限りだと数は少ないないと思います。

    コミューン(自治体)が直接運営していた時はずっと質の良いサービスだったという証言もあり、民営化による最悪の結果だと思います。日本でもグッドウィルなどのケースがありましたが。。日本でも同じ轍を踏まないよう、公共ケアの縮小させない、民営化を避ける、そうでなければ監視体制を整えるなどしてほしいです。

    私自身が介護の分野で働いているため、日本の方にスウェーデンの(近年の市場主義による)悪い実態も知ってほしいと思い、コメントさせて頂きました。
    長々と失礼しました。

  • #2

    Tsukasa Yamaguchi (水曜日, 16 11月 2011)

    コメント、ありがとうございました。

    私も今回の滞在中に、ストックホルムの高齢者施設における事件の話をよく耳にし、心配していました。
    ヴェクショーでCarema Careが受託している施設は、コミューン直営の施設と雰囲気は違いましたが、ある程度はケアの質が保たれている印象を受けました。

    ストックホルムがこの状況にどう対処していくのか、注目していきたいと
    思います。また新たな情報がありましたら、お知らせいただけるとうれしいです。