スウェーデン研修―その3

スウェーデン研修3日目の朝。お天気はくもり気味ですが、わくわくした気持ちで迎えることができました。

 

7:40にホテルのロビーに集合。20分ほど車で移動し、8:00から、家族支援員(anhörigkonsulent)のヤン・オルフさん(Jan-Olof Svensson)さんのオフィスに行き、お話をうかがいました。スウェーデン人は夕方になるとさっさと仕事を切り上げて帰ってしまうのが普通ですが、朝は早くから仕事をしている人が多いのです。家族支援員とは、介護が必要な方の家族をサポートする仕事で、ヴェクショー市に2人、配置されています。

 

2009年にスウェーデンの「社会サービス法」が改正され、高齢者や障害者の「家族への支援」が義務化されました。スウェーデンでは、高齢者福祉はコミューン(kommun)という市に相当する自治体が責任を持っていますので、その取り組みはコミューンによって異なります。

 

家族支援員は、家族に対してサービスに関する情報提供をしたり、相談にのったりアドバイスをしたりしています。時には、福祉サービスに異議申し立てをする家族と市との間に入って調整をすることもあるそうです。

日本でも、最近、家族支援の重要性が指摘されていますが、そのために専門職を配置し、実際にアクションを起こしているスウェーデンは、やはり1歩前を進んでいるな、と感じさせられました。

 

続いては、11:30からホブスルンド(Hovslund)という高齢者施設へ。ここでは100人の高齢者が入居しているのですが、120人のスタッフ(常勤換算では100人ぐらい)でケアをしているということです。実はスウェーデンの高齢者施設には、人員配置基準はありません。入居者の状況に応じて予算の上限が決められ、その範囲内で人を手配するという感じになっています。

ケアにかかる費用は、その人の経済的状況によって異なりますが、最高で1,700SEK/月。あと、家賃が4,000SEK/月、食費が100SEK/日とのことです。ひとりひとりによって違うので、「典型的なケース」は説明できない、と言っていたのが印象的でした。

 

昼食は入居者のみなさんと同じものを食べることができました。たっぷりのジャガイモにリンゴンベリーのジャムと、典型的なスウェーデンのメニューでした。

そして館内の見学。そんなに新しい施設ではないのですが、スウェーデンらしい、シンプルモダンなテイストでまとめられ、清潔感のある印象を受けました。ちょっとした空間にも家具を置いたり絵を飾ったりすることによって、施設的な感じは全くありません。お部屋も、ゆったりとした空間にバス・トイレ、キッチンが備え付けられていて、日本で言うところの1LDKのような感じです。たくさんの写真や絵が飾られ、入居している人「その人らしさ」が見えてくるような部屋になっていました。

 

デイサービスでは、たくさんの機織りの機械や大工道具が並び、みなさんかなり本格的な作業をされていました。いまの高齢者の年代のスウェーデン人にとって、機織りは刺繍はお手の物、といった感じでしょうか。お店に売っていてもおかしくないような作品がたくさん並べられていました。

 

見学の後は、私の留学していたリンネ大学へ。当時の恩師、ビョーン(Björn Albin)先生とカタリーナ(Katarina Hjelm)先生にお会いすることができました。私がここで学んだのは2002年から2003年ですので、もう8年以上前のことになってしまいましたが、お二人とも当時のことをよく覚えていてくれていて、とてもうれしくなりました。スウェーデンでは、たとえ大学の先生でもファーストネームで呼びます。そんなフラットな人間関係も、スウェーデン社会の秘密のひとつなのでしょう。

 

夕方は、ヴェクショーの中心部に戻って少しお店を見て回りました。変わらない街並みの中でも、新しいお店がいくつもできていて、たのしい時間となりました。ちょっとした小物がオシャレだったりして、おみやげがたくさんできそうです。

 

そして夜、鈴木先生と打ち合わせをした後、一行は近くのパブへ。たのしくお話しをしていると、けたたましく火災警報が鳴り響きました!お客さんはみんなあわてて外に避難し、消防車もかけつけてちょっとした騒ぎになりましたが、誤報だったのか、しばらくするとお店に戻ることができました。まあ、旅にハプニングはつきもの。これもひとつの良い経験になりました。

 

Tsukasa