オリンピアスウェーデン研修2018―その5

ヴェクショーで迎える最後の朝。毎年のことですが、充実した時間は経つのが早すぎて、信じられないほどです。ホテルの朝食は6:30からスタートなのですが、今日はスケジュールがタイトだからと10分ほど前に行ってみるとすでに何人かのお客さんが食べ始めていました。スウェーデンの人たちは朝早くから仕事を始めて、夕方にはすっぱり切り上げます。この効率のよい働き方は、私たちも真似したいものです。

 

さて、今日は8時からリンネ大学へ。実は来年の春、オリンピアではリンネ大学医療福祉学部の4名の学生の実習を5週間、受け入れることになっています。学生さんたちの自己紹介や関心がある分野について聞いたあと、私がオリンピアについてプレゼンテーションをしました。リンネ大学の国際化の取り組みのひとつとして紹介をしたいとのことで、ピンマイクをつけて撮影されていたので、久しぶりに緊張感のあるプレゼンテーションとなりました。4人ともとても関心をもって聞いてくれ、ぜひ日本に行きたいとのことだったので、よい実習プログラムになるように、これから準備をしていきたいと思います。

 

その後、私が留学していたときからお世話になっている、クリスティーナ先生から、スウェーデンの高齢者福祉について講義をしてもらいました。国・県・市の3つのレベルの役割分担や、社会サービス法と保健医療法、そしてスウェーデンの高齢者福祉の歴史についてお話がありました。1970年代、スウェーデンにおいてもホームヘルプは家事援助が中心で、主婦の仕事の延長線上にありました。実際に現場で働いていたクリスティーナ先生によると、年に1回だけ約200名のスタッフが顔を合わせるミーティングがあったということでした。しかし、80年代に入ると、スウェーデンの女性たちの社会進出が進み、主婦があまりいなくなったということ、そして専門化されていないヘルパーでは高齢者のケアのニーズに対応できなかったということにより、ホームヘルパーの仕事の専門性を高めフルタイムの仕事にするという取り組みが行われました。1日に複数回のミーティングがあり、チームでのケアを行うことによって、ホームヘルパーの仕事というものが確立されていったのでした。

 

そして10:00からは、昨年オープンしたばかりの高齢者施設、"Humana Södra Järnvägsgatan" を訪問しました。Humana社がヴェクショー市から運営委託を受けている施設です。昨年と同じく、グループリーダーのマリソール(Marisol)さんが案内をしてくれました。ここの施設は、9名のユニットが2ユニットずつ4つのフロアに配置されているので、定員は72名となっています。市営の施設と比較したときに、民営施設の強みは意思決定の速さだと、マリソールさんはおっしゃっていました。新しいアイディアをすぐに実行できるのも、民営施設で働くことの魅力だということです。今日も、「ホテル・ブレックファスト」というイベントが行われていました。施設内の共用スペースを利用して、ホテルの朝食ビュッフェのような高級感と雰囲気を提供するというものです。各フロアのインテリアも北欧デザインで統一されているほか、居室の天井が非常に高く設計されているため、全く施設特有の閉塞感を感じることはありませんでした。また、マリソールさんは日本の高齢者介護にも大変興味をもっていて、彼女からも逆にいろいろな質問をされました。スウェーデンと日本、それぞれの良さを共有して、よりよいケアを追求していくことができればいいなと思います。

 

昼食はリンネ大学のキャンパス内にあるテレボーイ城(Teleborgs Slott)のレストランへ。ホテルや会議場も兼ね備えているテレボーイ城ですが、最近スウェーデンの有名人の対談番組の収録があったということで、ますます人気が出ているとのこと。今日もあっという間に多くのお客さんで一杯になりました。日替わりランチのメニューは豚肉の煮込みか白身魚のソテー。ヴェクショーでの研修の打ち上げということで、ゆったりと昼食を楽しむことができました。

 

さて、午後からは今年の研修の最後のプログラムとなる、知的障害の方のデイケアセンターのひとつ、テキスティール・グルッペンの訪問です。ここには約20名の利用者が登録し、毎日10人ほどの方が通っています。自分たちで機織りをしたり、布の染色をしたり、シルクスクリーンで絵付けをしたり、最近では陶芸を始めたりと、とてもクリエイティブな活動を利用者の方々が主体的に行っているのが大変印象的でした。ここで作られた作品は、街中のパッペリーアンで販売されているほか、市役所や市の関係の団体、個人の人からの委託で作品を製作したりもしています。この取り組みはスウェーデンの中でも注目を集めていて、全国から見学者が訪問しているとのことです。そして2年ほど前から、IKEAとの共同プロジェクトが進行していて、ついに来年の2月ごろに、テキスティール・グルッペンとパッペリーアンのデザインを使った商品が、世界中で販売されるとのことです。もちろん日本のIKEAでも購入可能ですので、みなさん是非お買い求めください!!

 

その後、4日間お世話になったレンタカーのボルボV90にガソリンを入れ、パッペリーアンで昨日の紙漉き体験でできた紙を受け取り、ヴェクショーのメインストリートに面するカフェでこの研修の評価会を行いました。3人のスタッフそれぞれ口にしていたのが、「百聞は一見にしかず」ということ。いくら他のスタッフが経験してきたことを話で聞いて、映像で見たとしても、スウェーデンの人々の生活や文化を肌で感じるのとは全く異なるということです。そしてこの研修で学んだことを、日本に戻ったらすぐに明日からの仕事に生かして欲しいと強く思います。

 

電車の出発まで少し時間があったので、ヴェクショーの大聖堂やスモーランド博物館を少し見学し、駅に向かうこととなりました。4日間、私たちのために時間を割いて、この素晴らしい研修をコーディネートしてくださった鈴木先生が、駅まで見送りにきてくれました。駅に着くと、空はもう暗くなっているのに電灯は付いておらず、プラットホームは真っ暗。何の説明もありません。日本では考えられない状況ですが、これもスウェーデンでのよい経験。お互いのよいところを学び合っていくというのが、国際交流をする上では大切だと、改めて感じさせられました。

 

ヴェクショーを出発し、お隣のアルベスタでSJ(スウェーデン鉄道)のX2000という高速列車に乗り換え、私たちはスウェーデンの首都ストックホルムに向かいました。3時間半ほどの鉄道の旅ですが、ウトウトしている間にあっという間に到着しました。ストックホルムの街に出てみると、ヴェクショーとはまた違う、大都会の雰囲気。さあ、明日はストックホルムの観光です!!

 

Tsukasa