オリンピアスウェーデン研修2017―その4

今日も曇り空のヴェクショーの朝。7時に朝食のレストランに行ってみると、もうすでに満席。スウェーデンの職場では8時始業のケースが多く、出張でヴェクショーに来ている人たちも早くから準備をしています。人口9万人ほどのヴェクショーですが、実は8,000もの企業が集まっています。その多くは中小企業で、最近はIT関係の会社が増えているとのこと。ホテルでも、スウェーデン語だけでなく、英語やドイツ語など、さまざまな言葉が飛び交っています。私たちはもちろん日本語でしゃべっているわけですが・・・。

 

さて今日の最初のプログラムは、私の15年来の友人のエリック(Erik Bratt)が勤める、隣町アルベスタ(Alvesta)の小学校の訪問。電車の乗り継ぎ駅として多くの人が行き交うアルベスタですが、人口は2万人弱の小さな街です。教えられた住所を頼りに、15分ほど車を走らせていると、小学校は簡単に見つかりました。昔は地図を片手に目的地にたどり着くのに苦労しましたが、いまはGoogle Mapが世界中どこに行ってもナビをしてくれるので、海外での運転もだいぶ楽になりました。

約束の9時半に学校を訪れると、なんとエリックはいません!! 先生たちに聞いてみると、急に病気で休んだ先生のフォローで、子ども達をプールに連れて行っているとのこと(もちろん室内プールですが)。みなさん代わる代わる電話をしたりしてくれているのですが、つながりません。途方にくれていると、キャロラインという一人の若い先生が、案内役を買って出てくれました。小学校の各学年、6歳児を対象としたプレスクールの授業の様子や、子どもたちの遊ぶ様子を、丁寧に説明しながら案内してくれました。プレスクールの子どもたちは、昨日消防署に見学に行ってきたそうで、今日は消防車の絵を描いたり、もし家が火事になったらどうやって消防署に電話をするかという話し合いをしたりしていました。

子どもたちにとって日本人のお客さんはよほど珍しかったようで、すぐにみんなが集まってきて質問攻めにあいました。英語が出来る子は英語で話をしてくれたり、「こんにちは」「さようなら」と日本語を知っている子は日本語で話しかけてくれたりしました。

さらには先生たちの休憩室でコーヒーまで出してもらってくつろいでいると、やっとエリックが戻ってきました。いまは年に1回しか会うことができませんが、お互いに顔を合わせるとすぐに15年前にタイムスリップすることができるような、そんなステキな関係です。

 

アルベスタで一番有名なカフェといえば、「Cafe St.Clair」でしょう。日本からやってきたのマスミさんとご主人のエマニュエルさんが夫婦で営んでいる、スウェーデン風日本風カフェです。日本風の「おもてなし」はスウェーデンの人たちの心をしっかりとつかんでいるようで、今日も12時からは予約で満席。それまでの間にランチをいただくことにしました。今日のメニューはなんと「ヘラジカとシカのシチュー」。3人のスタッフにとっては初体験のヘラジカでしたが、臭みをうまくおさえてうまみが引き出されていて、大満足のランチとなりました。お礼にオリンピアのマスコットキャラクター、ヘラジカのエリィくんのトートバッグを差し上げてきました(笑)12月に日本に来られるときには、神戸を訪問してくれるとのこと。いまから楽しみがひとつ増えました!!

 

午後は、高齢者福祉や障害者福祉の現場で働くアンダーナース(Undersköterska)の養成を行っている、職業訓練学校"Lermia"を訪問し、講師のアンネ(Anne Purell)さんから認知症ケア教育についてのお話を伺いました。認知症の方のグループホームを最初に始めたスウェーデンで、どのような教育が行われているのか、ぜひ聞いてみたいということで、今年初めてプログラムに入れてもらいました。

こちらの学校では、いまも働いている生徒が多いため、教育の多くの部分はオンラインで行われています。そのため入学時期もバラバラで、現時点で101名の生徒がいるとのことです。彼らは28ヶ月をかけて1,400ポイントを取得し、卒業します。厳密に言うと、アンダーナースは資格の名前ではなく、養成課程を卒業した生徒が就職して初めてアンダーナースとなることができます。アンダーナースでなくても働くことはできますが、多くのコミューンで、正規採用はなかなかされていないのが現状です。現在、コミューンで働いている無資格の介護士が30名、特別枠で勉強をしているそうです。残念ながら、スウェーデンにおいても介護の仕事は待遇のよい仕事ではありません。でも、現在学んでいる学生の多くは、介護の仕事に興味をもって来てくれているとのことでした。

オンラインでの教育は、与えられた課題に対するレポートの提出を中心に行われます。具体的な架空の事例に基づいたレポートや、実習に行ったときに接した利用者さんに関するレポートなど、実践的な内容になっているのが印象的でした。提出されたレポートは、コンピュータのプログラムによって自動的に、他の生徒のレポートや過去のレポート、論文や本、Web上の記事と何パーセント一致するかがチェックされます。盗用に対して非常に厳しく対処がなされています。日本の大学も見習わなければ・・・。

アンダーナースの教育は高等学校レベルですが、コース修了のためには卒業論文を書かなければなりません。理論に基づいた本格的な論文を書くそうで、しっかりと論理的な思考力を身につけた上で介護の仕事に就くのは心強いことですね。

 

さて、今日のプログラムを終えた私たちは、1時間ほど東に車を走らせて、コスタ(Kosta)という街に向かいました。「ガラスの王国」として有名な、スモーランド地方のこの地域には、たくさんのガラス工場が集まっていて、夏の時期には多くの観光客が訪れます。私たちも、1960年代、70年代のアンティークのガラス製品の掘り出し物を見つけたり、有名なコスタボダ(Kosta Boda)やオレフォス(Orrefors)のアウトレットでお土産を探したりしました。様々なイルミネーションで彩られたガラス工場は、すっかりクリスマスの装いでした。

今日はヴェクショー最後の夜。ホテルに戻って夕食を済ませた後、新しくできた"Chapter House"というパブに行ってみました(http://www.chapterhouse.se/)。各国から集めたクラフトビールが売りのお店で、これからヴェクショーの人気スポットになりそうです。冷たい夜風に吹かれながら、少し街中を散策し、長かった1日も終わりを迎えました。

さあ、明日はいよいよヴェクショー最終日です。

 

Tsukasa