オリンピア スウェーデン研修2014―その5

スウェーデン研修もいよいよ5日目。

スウェーデンの障害者福祉サービスは、LSS法(一定の機能的な障害のある人々に対する援助とサービスに関する法律)に基づいて、各コミューン(市)によって提供されています。ヴェクショーでも様々な取り組みが行われていますが、今日は、市内26か所で行われている日中活動のうち、5か所を見学することになりました。


朝8:30から、まずスルッセン(Slussen)というセンターで、10か所の日中活動を管轄しているヨーハンさんから、LSS法の概要とこのセンターでの活動についてお話をうかがいました。ここでは、様々な企業から委託される仕事と、絵画や創作などの芸術活動を行っています。見学に行くと、ちょうどみなさんが車のナンバープレートを取り付ける台をパッキングしているところでした。グループになって作業を行う広い部屋の他に、ひとりで静かに作業をしたい人たち向けの小さな部屋もあり、「ひとりひとりの持っている能力を引き出す」ということにとても力を入れていることがよくわかりました。

続いては街の中心部に戻って、毎年訪れているパッペリーアン(Papperian)という紙細工を中心とした作業所へ。ここでは、市の印刷工場から出たさまざまな色の紙を再利用して紙すきを行い、それを使ってポストカードや招待状などさまざまな製品に加工し、販売を行っています。紙すきをするのが得意な人、絵を描くのが得意な人、とそれぞれの力を上手く発揮しながら作業を行っているのが印象的でした。

お店のコーナーでは、スルッセンとテキスタイル・グルッペンで作られたものも一緒に販売しています。障害がある人たちでも使えるように、レジはタッチパネル式。商品や預かっお金をタッチしていくと、お釣りがお金の写真で表示されるというシステムで、「物を作り上げて売る」というプロセスすべてにみなさんが携わることができるようになっていました。ここで売られているさまざまなグッズは、素敵なデザインと風合いでお土産にはぴったりです!!


昼食はリンネ大学にあるカフェ・トゥーバン(Cafe Tufvan)へ。市と大学が共同で運営するこのカフェも実はLSS法に基づく日中活動の場。障害がある方が手際よく注文をとってサーブしています。料理もかなりおいしく、雰囲気がとてもいいカフェなので、いつ行っても学生でいっぱいです。私はチキンのスティックとポテトグラタンのセットを注文。とてもボリュームもあって、大満足なランチとなりました。

午後からは、布を使った製品を作っている、テキスタイル・グルッペン(Textilgruppen)へ。ここでは、布を染色して絵柄を付けて、それを使ってカバンやクッションカバー、キッチン用品などを作ったり、布の切れ端を紐状に加工して機織り機で織ってランチョンマットを作ったりしています。とても明るい人ばかりで、見学している間も、ずっと冗談を言って笑わせてくれたり、実際に布への絵付けを体験させてもらったりしました。最近では、外部の会社に委託して、ここで作った布を木の板と一緒にプレスして、お盆を作っています。決して現状に満足することなく、常に新しいことにチャレンジしようという姿勢は、スウェーデンらしさを感じさせてくれました。


そして今日最後の訪問となる5か所目は、1年半前にできたばかりの、リングスベリィ・ゴーデン(Ringsbergsgården)。ここでの活動は、なんと「貸し会議室」。大小ふたつの会議室を用意し、ヴェクショー市の会議のために貸し出しているのです。意外なことに、スウェーデン人は会議好き。長時間になることもよくあるので、必ずコーヒーや紅茶、にシナモンロールやケーキなどが出てきます。ここでは、会議室の隣に本格的なキッチンがあって、パンやケーキなども自分たちで焼いて提供しています。文字で理解することが難しい人たちのために、すべての作業手順がピクトグラムで説明されていました。また、あまりにもここのパンやケーキがおいしいので、レシピを印刷・製本して販売するということもやっています。民間企業顔負けのアイディアで、たとえ障害があっても実社会と同じような仕事をすることができるのは、生きがいをもってひとりひとりが「その人らしく」生きる上で、とても大切なことだと感じました。


夕方、空き時間を利用して、リンネ大学のちょっと南に位置する給水塔(Vattentorn)に行きました。給水塔とは給水システムに水圧をかけるために、かつてたくさん作られたものですが、鈴木先生はここのことを「百聞は一見にしかず」ならぬ「百見は一聞にしかず」と呼んでいます。なぜ「百見は一聞にしかず」かって??それはぜひ、みなさんの耳で確かめてみてください。


夕食後、私の友人で、フルート奏者で現代音楽の作曲家のハンスが私たちに会いに来てくれました。ホテルの近くのカフェで、日本とスウェーデンの文化の違いについての話が盛り上がりました。日本から遠く遠く離れたスウェーデンに、いつ来ても心から歓迎してくれる友人たちがいることはとても幸せだなと感じた夜でした。

Tsukasa